ミッションステートメント

地域再生人材創出構想の概要

長崎県では観光立県を推進しているが、世界遺産候補の教会群をはじめとして多くの観光資源は半島や離島に点在している。これらを有機的に結び付けるために交通インフラ網が整備されているが、厳しい塩害環境下にある長崎県のインフラ構造物は環境劣化が進行している。一方、長崎県の財政状況は厳しく、建設事業費は削減されおり、維持管理費についても大幅な増額は見込めない。

既設のインフラ構造物は地元の宝であり、これらのメンテナンスはこれまでの「事後保全」から「予防保全」へと変化せざるを得ない。予防保全は小規模で継続的事業であるため、身近できめ細かい対応が必要となり、8割以上が地元の仕事である。したがって、産官学が連携してインフラ長寿命化技術を向上させ、県民共有の重要な財産であるインフラ構造物の長寿命化を図り、美しい"観光ナガサキ"を維持することにより、地域の再生と活性化に貢献する必要がある。

本事業では、長崎県と連携して、県内の自治体職員、建設・コンサルタント業、NPO、地域住民を対象とし、道路構造施設の維持管理に携わる"道守"(道守、特定道守、道守補、道守補助員)を養成する。道守、特定道守、道守補候補者に対しては、書類審査と面接により選抜し、講義、実験、実地研修等を組み合せた総合コースを開講し、インフラ構造物の維持管理に係わる基礎知識と応用能力を教示する。養成修了者は各種資格を取得して、厳しい財政条件に対応した県内インフラ構造物の維持管理計画の立案、地域に密着した維持管理業務等に従事するとともに、インフラ構造物の長寿命化に係わる新産業創出に貢献することになる。一方、道守補助員候補者(一般市民)に対しては、県内の道路、河川、港湾などのボランティア・愛護団体等を通じて公開講座を開催し、インフラ構造物の維持管理の重要性について啓蒙活動を行うとともに、インフラ構造物の維持管理のチェックポイントを教示する。

以上により、インフラ構造物の長寿命化事業による観光振興と新産業創出の両面から、長崎県の財政負担軽減、雇用創出、地域再生・活性化を支援する。

3年目における具体的な目標

道守、特定道守、道守補については、技術士、鋼構造診断士、コンクリート診断士、一級土木施工管理技士等の試験に合格できる程度の基礎知識、応用能力を修得することを到達レベルとする。設定されたカリキュラムをすべて受講し、最終試験に合格した場合にコースの修了を認定する。なお、本養成コースの修了者は"道守"としてインフラ長寿命化の業務に携わる。

道守補助員については一般市民を想定しているため、選抜試験は実施せず、県内の道路、河川、港湾などのボランティア・愛護団体等に所属している住民を主たる対象とする。道守補助員はインフラ構造物の維持管理の重要性を認識するとともに、構造物の維持管理のチェックポイントを習得し、実際に不具合や変状が生じていないかを継続的に報告することができるようになる。

養成人数は、道守、特定道守、道守補、道守補助員の各レベルの取得者を、3年目終了までに累計で110人(各々2人、8人、25人、75人)とすることを数値目標とする。

実施期間終了後の取組

本事業で養成される"道守"に期待される役割は、観光地インフラの維持管理マネジメントにより地域の活性化に貢献すること、および将来の"道守"候補者の育成により本事業の継続性を担うことにある。

また、本人材養成ユニットは、"インフラ長寿命化センター"が果たすべき機能の一部として位置づけられる。実施期間終了後には、将来の見通しについて長崎県と協力して再評価を行い、各コースに対するニーズが見込めれば、インフラ長寿命化センター内の常設ユニットとする。

実施期間終了後の養成人数は、道守、特定道守、道守補、道守補助員の各レベルの取得者を、累計で190人(各々4人、16人、45人、125人)とすることを数値目標とする。

コース修了者には自治体職員、地元企業社員ばかりでなく、そのOBや一般市民も含まれるため、その活動の場としてNPOを利用する。その役割は、道守の育成と運用管理、道守の業務支援、メンテナンスの普及活動と長寿命化活動のモデル事業を継続的に実施することである。将来的には、道守だけではなく、水守、海守、川守、森守、山守の養成のモデルケースとしての役割を担う。さらに、本事業で養成する"道守"はいわばホームドクター的役割をも果たすものである。

それに対して"インフラ長寿命化センター"は、"道守"育成を支援するとともに、インフラ構造物の劣化診断、補修・補強法、遠隔診断法、アセットマネジメントなど先端的研究開発を担う「インフラ構造物の総合病院」構想を目標として掲げている。

期待される波及効果

"道守"養成ユニットにより、維持管理計画の立案・実施へ貢献できる技術者を継続的に供給することができるため、"道守"集団の活躍により、観光立県長崎の交通インフラ施設の維持管理を効果的に遂行して、観光産業の発展に寄与できる。


造船、機械、IT産業の人材と技術をインフラ長寿命化分野へ移転することができ、退職者の再雇用が図れる。また、これらの技術が点検、計測、診断および補修・補強工法などの"インフラ長寿命化"に貢献する新産業となるとともに、高度な計測技術やモニタリング手法の開発は新たな産業創出のシーズとなることが期待される。


特殊な補修工事の大部分は県外企業が受注していたが、地元企業の技術者を"道守"として養成することにより、県内企業の受注機会の増加が見込める。そのため、地元建設業の人材育成と活性化、雇用創出を図ることができる。


予防保全により社会資本の長寿命化で更新投資を削減できるため、県市町財政の経費節減が可能となり「地域再生」に寄与することができる。


本養成ユニットは、"道"だけではなく、地域住民の生活に必要不可欠な"水""海""川""山""森"を守る人材育成への展開が期待できる。それにより観光立県ナガサキの発展にさらに寄与することができる。

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